「they」は複数ってわけじゃない

英語は単数・複数を意識しながら話すのが面倒ですよね。

さらに、三人称になると性別まで考えなくてはならないし。

中学で「犬でもオスなら He、メスなら She」と教わって

ずいぶん面倒な言葉だなと思ったのを、結構はっきり覚えています。

実際、英語で「可愛いわんちゃんね!」と話しかける時には

その前に「He or she?(または Boy or girl?)」と質問することから始めなくてはなりません。

 

で、複数なら they というのが文法にのっとった言い方になりますが

この they について、最近英語の辞書に

「自分の性別をnonbinaryと認識している単数の人物」という定義が加わったそうです。

nonbinary(ノンバイナリィ)は、男性か女性かに分類できない性別のこと。

(binary は二進法とか二元とか、2つに分ける数学・化学用語です)

つまり、LGBTの人などを表す三人称単数として「they」を使う用法ということですね。

 

ちなみに、三人称の場合、動詞の活用が単数・複数で違いますが

(三単現のsというやつです)

そこは they を複数として扱う、もともとの文法に合わせるらしいです。

「その人は30代で、渋谷に住んでいます」なら

「They are in their thirties and live in Shibuya.」

文面だけでは単数か複数かわからなくなりますが、そこは話の流れで理解ですね。

 

言語は文化を反映し、時代で変化していくのは当たり前のこと。

これだけ性別の多様化が進むなか、こういった英語の変化も生まれています。

日本語は、He / She などを英語のように明確に使う必要はありませんが

言語学的には男ことば・女ことばが明確に存在する、数少ない言語とされています。

室町時代の宮中の「女房ことば」が、女性の間に浸透していったのが発祥らしいです。

とはいえ、最近「~ですわ」なんていう女性にお会いしたこともないし

日本語でも確実に性差はなくなってきているように思います。

日本語を勉強している外国の人って大変だなーと思う点の1つでもありますし

個人的には好ましい変化と受け止めています。